課題設定がうまくいかない理由とは?新規事業でよくある失敗パターン
この記事のポイント
・新規事業の課題設定がうまくいかない原因には、解決策から考える、少数の顧客の声だけで判断する、課題を抽象的なまま扱うといった共通するパターンがある。
・課題設定のズレを防ぐには、顧客の発言だけでなく実際の行動や状況を確認し、事実と仮説を分けながら検証を繰り返す必要がある。
「顧客へのヒアリングも行い、解決する課題も決めた。それなのに、サービスを提案しても反応が良くない。」
新規事業では、このように課題を設定したはずなのに、その後の検証が思うように進まないことがあります。
原因は商品やサービスだけにあるとは限りません。
そもそも設定している顧客課題が実態とずれている可能性もあります。
特に新規事業では情報が少ないため、社内の思い込みや一部の顧客の発言を事実として扱ってしまい、気づかないうちに課題設定がずれることがあります。
課題設定で重要なのは、最初から正しい答えを出すことではなく、ズレを検証によって発見し、修正できる状態を作ることです。
本記事では、新規事業の課題設定でよくある失敗パターンと、それぞれを改善するための考え方を解説します。
作りたいものから課題を探してしまう
新規事業では、「自社の技術を活用したい」「このアイデアを事業化したい」といったところから企画が始まる場合があります。
こうした出発点そのものが問題というわけではありません。
注意したいのは、すでに決めた解決策を正当化するために顧客課題を探してしまうことです。
例えば、「AIを活用した営業支援サービスを作る」と先に決めていると、ヒアリングでもAIによって解決できそうな問題ばかりに注目しやすくなります。
顧客が別の部分に強い課題を抱えていても、自社のアイデアと結びつかない情報を無意識に軽視してしまう可能性があります。
改善するためには、「このサービスを必要としている顧客は誰か」だけではなく、「顧客は現在どのような問題を抱えているのか」という視点へ戻ることが重要です。
解決策と課題をいったん分けて整理することで、顧客の実態を捉えやすくなります。
顧客の要望をそのまま課題として扱う
顧客から「この機能が欲しい」と言われると、明確なニーズを発見したように感じることがあります。
しかし、要望は顧客自身が考えた解決策であり、その背景に別の課題が存在する場合があります。
例えば、「スマートフォンから操作できるようにしてほしい」という要望だけを見れば、スマートフォン対応が必要だと判断できます。
しかし、詳しく確認すると、「外出中に承認できず、業務が翌日まで止まってしまう」という問題が背景にあるかもしれません。
この場合、解決すべき対象はスマートフォン対応そのものではなく、承認待ちによって業務が止まる状態だと考えられます。
要望を受け取ったら、「なぜ必要なのか」「現在はどのように対応しているのか」まで確認します。
要望を課題と決めつけず、その背景を探ることが重要です。
一人の顧客の声を市場全体の課題だと考える
ヒアリングで強い反応が得られると、「この課題には需要がある」と判断したくなることがあります。
しかし、一人の顧客が強く困っていることと、市場に同じ課題が存在することは別の問題です。
特定企業の業務フローや組織構造、既存システムなどによって生まれている特殊な課題である可能性もあります。
そのままサービスを開発すると、一社には適していても、他社では必要とされないものになることがあります。
そこで、似た属性を持つ複数の顧客へ確認し、共通する状況が存在するかを調べます。
顧客ごとに表現する言葉が違っていても、問題が発生する背景や行動に共通点がないかを見ることが重要です。
「強く困っている一人」を見つけることと、「同じ課題を持つ顧客が存在する」と確認することは分けて考える必要があります。
課題の表現が抽象的すぎる
「営業活動を効率化したい」「業務の生産性が低い」「情報共有に課題がある」といった表現は、新規事業の企画でも使われやすいものです。
しかし、この状態では具体的に何を検証すればよいのか分かりません。
例えば、「営業活動が非効率」という課題でも、商談先を探すことに時間がかかっているのか、提案資料の作成に時間がかかっているのか、商談後の報告作業が負担なのかによって必要な解決策は異なります。
課題を整理するときは、「誰が」「どのような場面で」「何に困っているのか」まで具体化します。
可能であれば、発生頻度や現在の対処方法、問題によって生じている影響も確認します。
具体化することで、次に顧客へ何を確認すればよいのかも明確になります。
「困っている」という言葉だけで課題の強さを判断する
顧客から「確かに不便です」「それは困っています」と言われると、解決する価値のある課題に見えることがあります。
しかし、顧客が不便を感じていることと、その問題を優先して解決したいことは同じではありません。
年に一度しか発生しない問題で、数分の作業で対処できるのであれば、新しいサービスを導入してまで解決したいとは考えないかもしれません。
一方、毎週発生し、複数の担当者が何時間も対応している問題であれば、解決する優先度は高い可能性があります。
課題の強さを判断するときには、
・どの程度の頻度で発生しているか
・放置するとどのような影響があるか
・現在どの程度の時間や費用を使っているか
・すでに何らかの方法で解決を試みているか
など、顧客の具体的な行動や負担を確認します。
「困っています」という発言だけでなく、実際にどの程度のコストを負担しているかを見ることで、課題の強さを判断しやすくなります。
社内で作った仮説がいつの間にか事実になる
新規事業では、十分な顧客情報がない段階で企画を進める必要があります。
そのため、「この業界では○○に困っているのではないか」と仮説を置くこと自体は必要です。
問題は、その仮説が社内で何度も共有されるうちに、確認済みの事実として扱われてしまうことです。
例えば、企画書に「営業担当者は顧客情報の整理に課題を抱えている」と記載すると、その後の会議ではその前提から議論が進むことがあります。
しかし、実際にはまだ数人へヒアリングしただけかもしれません。
そこで、情報を整理するときには「確認できた事実」「そこから考えた仮説」「まだ確認できていないこと」を分けます。
何が分かっていて、何が推測なのかを明確にすることで、思い込みによる課題設定を防ぎやすくなります。
最初に決めた課題へ固執する
顧客ヒアリングや市場調査を進めると、最初の課題仮説と異なる事実が見つかることがあります。
しかし、すでに社内説明や企画承認を進めていると、設定した課題を変更しにくく感じることがあります。
その結果、顧客の反応が弱くても「伝え方が悪かったのではないか」「機能が足りないのではないか」と解決策側だけを修正し続けてしまう場合があります。
検証結果が想定と違ったときは、解決策だけではなく、課題設定そのものを見直すことも選択肢に入れる必要があります。
課題の対象となる顧客が違うのか。
問題が発生する場面が違うのか。
そもそも顧客にとって重要な問題ではないのか。
こうした前提まで戻って確認することで、方向性を修正しやすくなります。
課題設定は「決定」ではなく「検証する仮説」と考える
課題設定で失敗を避けようとすると、最初から完璧な課題を定義しようとしてしまうことがあります。
しかし、新規事業では顧客や市場について分からないことが多く、初期段階で正解を確定することは困難です。
そこで、課題設定を「これが顧客の課題である」という決定ではなく、「この顧客には、この状況で、この問題があるのではないか」という仮説として扱います。
その仮説をヒアリングや行動観察などで確認し、新しい事実が得られれば修正します。
必要に応じてプロトタイプやPoC、MVPなどの検証へ進み、顧客の反応を確認することもできます。
課題設定と検証を繰り返すことで、最初は曖昧だった顧客理解を少しずつ具体化していくことが重要です。
まとめ
新規事業の課題設定がうまくいかない背景には、作りたい解決策から課題を探したり、顧客の要望をそのまま課題として扱ったりするなど、いくつかの共通したパターンがあります。
また、一人の顧客の声を市場全体へ広げて考えることや、抽象的な課題のまま検証を進めることにも注意が必要です。
課題設定のズレを防ぐには、顧客の発言だけでなく、実際の行動や問題が発生している状況を確認し、事実と仮説を分けて整理します。
そして、検証によって想定と異なる結果が得られた場合は、解決策だけでなく課題そのものを見直します。
最初から正しい課題を当てようとするのではなく、課題を検証可能な仮説として扱い、顧客から得られた事実に合わせて更新することが、新規事業の方向性を見誤らないためのポイントです。
エナジャイズでは、新規事業担当者が顧客について得られた情報や課題仮説を整理し、次に確認すべきポイントを明確にするための支援を行っています。
顧客へのヒアリングを進めても課題を絞り込めない、現在の課題設定が正しいのか判断に迷われた際は、ぜひお気軽にご相談ください。
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アポが取れない、営業に苦手意識がある
株式会社エナジャイズ代表取締役岡崎 史
プロフィール
大学卒業後、大手飲料グループを経て、40事業を超える新規事業の立ち上げを経験。その経験を活かし、2022年、PMFと顧客開拓を同時に実現する『PMFプログラム』を開発。
徹底的に顧客視点に立つ独自の手法で、年間2,000社の新規商談を生み出すなど新規事業推進のスペシャリスト。
大企業を中心に伴走支援、研修、講演等実績多数。




