顧客の本音を引き出すヒアリングシート作成ガイド(実務編)
※本記事は新規事業開発に関する情報をまとめたものであり、弊社のコンサルティングにおいて必ずしも同様の内容をご提案するとは限りません。あくまで参考情報の一つとしてご覧ください。
「ヒアリングシートを作ってみたけれど、会話が浅いまま終わってしまう」
「質問は用意したのに、インタビューが盛り上がらなかった」
「本質的な課題を引き出すのが難しい」
新規事業担当者が必ずぶつかるのが、“質問設計の難しさ” です。
ヒアリングシートは質問を並べるだけでは機能しません。
目的と仮説をもとに、質問に“順番”と“意図”を持たせて設計したとき、初めて深い課題が見えてきます。
本記事では、前回の基礎編からさらに踏み込み、実務で使えるヒアリングシートの作り方 を具体的に解説します。
なお、「そもそもヒアリングシートの基礎から知りたい」という方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
1.まず「何を確かめたいのか」を決める
ヒアリングシート作成で最も重要なのは、質問よりも 目的の明確化 です。
新規事業でよくある目的は次の3つ。
・顧客の業務プロセスや行動を知る
・課題や不満の強度を測る
・価値提案やコンセプトの妥当性を確かめる
目的が曖昧なまま質問を作ると、会話が散漫になり「結局何が分かったのか分からない」という結果に陥りがちです。
2.仮説をもとに“優先順位”をつける
次に、仮説を整理します。
例えば SaaS の初期検証なら、次のような仮説が置けます。
・課題:データ共有が属人的で非効率
・原因:部署間の連携不足
・代替:Excel/スプレッドシート
・理想:リアルタイムで確認できる仕組み
・お金を払う理由:業務工数の削減
仮説を置くことでどの質問が最も重要なのかが明確になります。
限られた時間の中で深掘りするために、優先順位づけは欠かせません。
3.質問は「事実 → 具体 → 感情 → 判断」の順で構成する
ヒアリングの会話が深まりやすくなる“王道の流れ”があります。
1.事実(ファクト)
例:「業務はどのような流れで進めていますか?」
2.具体(具体例を聞く)
例:「直近の案件では、どこが大変でしたか?」
3.感情(困っている・面倒など)
例:「その時、どんなところにストレスを感じましたか?」
4.判断(選ぶ基準)
例:「サービスを選ぶ際に重視するポイントは何ですか?」
この順番が守られているだけで、自然と“本質的な課題”までたどり着きやすくなります。
4.良いヒアリングシートの質問例(SaaS/BtoB編)
以下に実務で使いやすい質問例を紹介します。
● 業務プロセス理解の質問
・毎日の業務フローを教えてください
・◯◯業務で一番時間がかかるのはどの部分ですか?
・現在使っているツールは何ですか?
● 課題の深掘り
・面倒だと感じる瞬間はいつですか?
・それが発生すると、どんな影響がありますか?
・その課題を放置したことで困った経験はありますか?
● 代替手段・現状の工夫
・今はどのように対処していますか?
・なぜその方法を選んでいるのですか?
・何があればもっと楽になりますか?
● 判断基準
・新しいサービスを導入するときに重視するポイントは?
・どのタイミングで導入を決めますか?
・社内での意思決定フローはどうなっていますか?
5.NGになりやすい質問
以下の質問は、インタビューが失敗しやすくなる典型例です。
・誘導質問:「自動化できたら便利ですよね?」
▶ 顧客が“本音ではなく社交辞令”で答えてしまう
相手は気を遣ってしまい、
「まあ…そうですね」
と答えがちです。
あなたの期待に合わせてくれるため、本当の課題の強度が測れません。
・未来の行動を予測させる質問:「これがあったら使いますか?」
▶人は正確に“未来の自分”を予測できない
行動経済学でも言われていますが、
未来の行動意図は当てになりません。
顧客は善意で「使うと思います」と言っても、実際には使われないことがほとんどです。
・Yes/Noで終わる質問:「使っていますか?」
▶ 深掘りできず、会話が広がらない
「はい」
「いいえ」
で終わってしまい、
そこから先の“理由”や“具体的なエピソード”が引き出せません。
インタビューは深掘りが命なので、Yes/No型は情報量が極端に少なくなります。
インタビューとは「事実」と「理由」を引き出す行為。
感情や判断の背景を聞くためには、オープンな質問が基本になります。
6.深掘り技術:回答の“裏側”を聞く
質問の質と同じくらい重要なのが、深掘りの技術です。
・ラダーリング:「なぜそう思ったのか?」を数回繰り返す
▶表面的な答えの“背景にある本音”を引き出せる
顧客は最初の回答では「事実」しか語りません。
しかし新規事業で必要なのは “なぜそう思うのか” という動機や価値観。
「なぜ?」を繰り返すラダーリングは、
表面的な不満 → 根本的な課題 → 価値観
という階層を掘り下げることができ、
企画の方向性を決める“本質的な示唆”が得られます。
・サイレントテクニック:あえて沈黙を作り、相手が考える時間をつくる
▶顧客が“考えて本音を話す余白”が生まれる
人は沈黙があると、つい追加で話したくなります。
焦らせず静かに待つことで、顧客は
「本当はこう思っていた」
「そういえば、あの時も…」
とより深い記憶や感情を思い出しやすくなるのが大きなメリット。
沈黙が“思考時間”になり、
こちらが意図しない有益な情報が自然と出てきやすくなります。
・反復:「つまり○○という理解で合っていますか?」
▶顧客の発言を正しく理解し、ズレを防げる
顧客の言葉は抽象的・曖昧になりがちです。
そこで、
「つまり○○という理解で合っていますか?」
とこちらが要約して返すことで、
・認識のズレがその場で修正できる
・顧客も自分の考えを整理し直せる
・会話の精度が上がる
つまり、反復は誤解に基づく検証を防ぐための最も簡単で強力な手段です。
これらを使うことで、より本音に近い話が引き出せます。
まとめ:ヒアリングシートは“考えて作るツール”
ヒアリングシートは、質問を羅列する作業ではありません。
仮説をもとに 「何を確認したいのか」→「どの質問で確かめるのか」 を設計する、戦略的なプロセスです。
新規事業は仮説と検証の積み重ね。
ヒアリングの質が変われば、得られる学びも、意思決定の質も大きく変わります。
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顧客検証の方法がわからない、手が回らない
アポが取れない、営業に苦手意識がある
株式会社エナジャイズ代表取締役岡崎 史
プロフィール
大学卒業後、大手飲料グループを経て、40事業を超える新規事業の立ち上げを経験。その経験を活かし、2022年、PMFと顧客開拓を同時に実現する『PMFプログラム』を開発。
徹底的に顧客視点に立つ独自の手法で、年間2,000社の新規商談を生み出すなど新規事業推進のスペシャリスト。
大企業を中心に伴走支援、研修、講演等実績多数。




