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バリュープロポジションとは?新規事業担当者が最初に理解すべき考え方

公開日:2026/10/26

エナメディア編集部

エナメディア編集部

この記事のポイント

・バリュープロポジションとは、特定の顧客が自社の商品やサービスを選ぶ理由を示したものであり、機能や特徴の一覧とは異なる。

・バリュープロポジションを整理する際は、対象顧客、解決する課題、現在の対処方法と比べた違いを明確にし、顧客検証を通じて仮説として更新していく必要がある。

顧客課題の検証を進め、「この課題には解決する価値がある」と判断できると、次はどのような商品やサービスで解決するのかを考える段階に入ります。

このとき、まず機能や仕様の検討から始めてしまうことがあります。 しかし、機能が十分に揃っていても、顧客が「なぜこのサービスを選ぶのか」を理解できなければ、提案しても検討の対象にならない場合があります。 反対に、機能が少なくても、顧客にとっての価値が明確であれば、導入に向けた話が進むこともあります。

バリュープロポジションとは、顧客がそのサービスを選ぶ理由を、顧客の立場から言葉にしたものです。 本記事では、新規事業担当者が最初に押さえておきたいバリュープロポジションの考え方と、整理する際のポイントを解説します。

バリュープロポジションとは何か

バリュープロポジション(Value Proposition)は、日本語では「価値提案」や「提供価値」と訳されます。 自社の商品やサービスが、誰に対して、どのような価値を提供するのかを示したものです。
ここでいう価値とは、企業が提供したいものではなく、顧客が受け取るものを指します。

例えば、営業担当者向けの情報収集サービスを考えたとします。 「AIで企業情報を自動で収集する」という説明は、サービスを提供する側から見た内容です。 顧客の立場から見れば、「アプローチ先の選定にかかっていた時間が減り、商談の準備に時間を使えるようになる」といった変化が価値になります。

バリュープロポジションは、自社が何を作るかではなく、顧客にどのような変化をもたらすかを表すものです。

新規事業では、何を開発するか、誰に提案するか、どのように説明するかを判断する場面が続きます。 バリュープロポジションが明確になっていれば、こうした判断を同じ軸で行いやすくなります。

機能や特徴とは何が違うのか

バリュープロポジションを整理しようとすると、サービスの機能や特徴を並べてしまうことがあります。 「多機能」「操作が簡単」「高精度」といった表現は、いずれもサービスの特徴です。

しかし、顧客は機能そのものを求めているわけではありません。 その機能によって、自分たちの業務や状況がどう変わるのかを求めています。

例えば、「承認フローをスマートフォンで操作できる」は機能です。 この機能によって「外出中でも承認でき、業務が翌日まで止まらなくなる」のであれば、それが顧客にとっての価値になります。
機能から価値を考えるときは、「それによって顧客は何ができるようになるのか」「何をしなくて済むようになるのか」を問い続けます。

機能は価値を実現するための手段であり、価値そのものではありません。

また、機能を増やすほど価値が伝わりやすくなるわけでもありません。 顧客にとって重要な価値が一つ明確になっている方が、提案の場でも理解されやすくなります。

バリュープロポジションを構成する3つの要素

バリュープロポジションを整理する際は、次の3つの要素に分けて考えると分かりやすくなります。

・誰のための価値か(対象顧客)
・どの課題を解決するのか(顧客課題)
・なぜ他の方法ではなく、このサービスなのか(選ばれる理由)

1つ目の対象顧客は、できるだけ具体的に設定します。 「中堅企業」「営業部門」といった広い設定では、顧客によって抱えている状況が異なり、価値も曖昧になりやすいためです。 「新規事業部門で、アプローチ先のリストを手作業で作成している担当者」のように、置かれている状況まで含めて考えます。

2つ目の顧客課題は、これまでの検証で存在や強さを確認できた課題を土台にします。 検証できていない課題を前提にすると、その上に組み立てた価値も不確かなものになります。

3つ目の選ばれる理由は、顧客が他の方法ではなく、このサービスを選ぶ根拠です。 課題を解決できるだけでなく、他の選択肢と比べて何が良いのかを説明できる必要があります。

3つの要素のどれかが曖昧なままでは、バリュープロポジションも曖昧になります。

比較される相手は競合サービスだけではない

選ばれる理由を考えるとき、同じ分野の競合サービスとの違いに注目しがちです。 しかし、顧客が実際に比較しているのは競合サービスだけではありません。

例えば、

・Excelや既存システムを使った手作業
・外部の業者への依頼
・社内の別部署への依頼
・問題を受け入れて何もしない

といった方法も、顧客にとっては比較対象になります。

特に見落とされやすいのが、「何もしない」という選択肢です。 顧客が現在の不便さを受け入れている場合、新しいサービスはその状態よりも明らかに良いと感じてもらう必要があります。

また、新しいサービスを導入するには、操作を覚える手間や社内の承認手続き、既存データの移行などの負担も発生します。 大企業では、導入までに複数の部署の確認が必要になることもあります。

バリュープロポジションは、顧客が現在の方法から乗り換える負担を上回るものである必要があります。

課題検証の段階で確認した「現在の対処方法」は、そのまま比較対象を考える材料になります。 顧客が今どのように対応しているのかを踏まえることで、何が違えば選ばれるのかを具体的に考えやすくなります。

一文で表現してみる

3つの要素と比較対象を整理できたら、バリュープロポジションを一文で表現してみます。 例えば、次のような型に当てはめる方法があります。

「【対象顧客】は、【課題】に困っている。【サービス】は、【現在の対処方法】と違い、【顧客に生まれる変化】を実現する。」

先ほどの情報収集サービスであれば、

「新規事業部門の営業担当者は、アプローチ先の選定に毎週数時間を使っている。このサービスは、手作業でのリスト作成と違い、条件に合う企業を短時間で絞り込めるため、担当者が商談準備に時間を使えるようになる。」

のように表現できます。

一文にまとめる目的は、きれいなキャッチコピーを作ることではありません。
社内での説明、提案資料、顧客へのヒアリングなど、さまざまな場面で同じ価値を軸に話せるようにすることです。

一文で書けない場合は、対象顧客や課題がまだ十分に絞り込めていないサインかもしれません。
その場合は無理に表現を整えるのではなく、前の段階に戻って整理し直します。

社内向けの言葉ではなく顧客の言葉で考える

大企業の新規事業では、企画の承認を得るために社内向けの説明を重ねる場面が多くあります。
その過程で、「既存事業とのシナジー」「DX推進への貢献」「自社技術の活用」といった言葉が、そのままバリュープロポジションに入り込むことがあります。

こうした言葉は、自社にとっての事業の意義を示すものです。
社内の意思決定には必要ですが、顧客がサービスを選ぶ理由とは別のものです。

「自社にとっての意義」と「顧客にとっての価値」は、分けて整理する必要があります。

顧客の言葉で考えるためには、ヒアリングで顧客が実際に使っていた表現を手掛かりにします。
「毎週金曜日の資料作成がつらい」「承認待ちで止まるのが一番困る」といった言葉は、顧客が価値を感じるポイントをそのまま表していることがあります。

整理したバリュープロポジションを顧客に伝えたとき、「まさにそこに困っている」と反応してもらえるかどうかが、一つの目安になります。

バリュープロポジションは仮説として検証し更新する

バリュープロポジションは、一度決めたら変えないものではありません。
新規事業の初期段階では、あくまで「この顧客には、この価値が響くのではないか」という仮説です。

そのため、顧客への提案や説明を通じて反応を確認します。

例えば、

・顧客が価値を自分の言葉で言い換えられるか
・具体的な利用場面について質問が出るか
・トライアルや社内での共有など、次のステップに進む意思を示すか
・価格や導入時期の話題が出るか

といった点は、価値が伝わっているかを判断する手掛かりになります。

反対に、「良さそうですね」という反応だけで話が進まない場合は、対象顧客、課題、選ばれる理由のどこかにズレがある可能性があります。
要素ごとに見直すことで、修正すべきポイントを特定しやすくなります。

また、MVPやPoCは、このバリュープロポジションが実際に成り立つかを確かめる手段として活用できます。

価値提案を検証し、顧客の反応から更新し続けることが、PMFへ近づくための土台になります。

まとめ

バリュープロポジションとは、顧客が自社の商品やサービスを選ぶ理由を、顧客の立場から言葉にしたものです。
機能や特徴を並べるのではなく、その機能によって顧客にどのような変化が生まれるのかを考えることが重要です。
整理する際は、対象顧客、解決する課題、選ばれる理由の3つに分けて考えます。

また、比較される相手は競合サービスだけでなく、顧客の現在の対処方法や「何もしない」という選択肢も含まれます。
一文で表現し、社内向けの言葉ではなく顧客の言葉で語れるかを確認することで、価値の曖昧さに気づきやすくなります。

そして、バリュープロポジションを決定事項ではなく検証すべき仮説として扱い、顧客の反応から更新し続けることが、新規事業をPMFへ近づけるポイントです。

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プロフィール 大学卒業後、大手飲料グループを経て、40事業を超える新規事業の立ち上げを経験。その経験を活かし、2022年、PMFと顧客開拓を同時に実現する『PMFプログラム』を開発。
徹底的に顧客視点に立つ独自の手法で、年間2,000社の新規商談を生み出すなど新規事業推進のスペシャリスト。
大企業を中心に伴走支援、研修、講演等実績多数。

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